極上求愛~過保護な社長の新妻に指名されました~
「わー、すごい人ですね」
「本当…やっぱり注目されてるだけあるね」
槙くんと2人で定時に仕事を上がらせてもらい、私たちは国枝里香の映画試写会会場にやって来ていた。

ぐるっと見渡す限り人、人、人…

「私、試写会って来るの初めてなんだけど…500人くらいの規模のものかと思ってた」
「えーっと今回…5000人キャパみたいですね」
「5000!?」

なにやら隣でスマホを操作して槙くんが見つけた情報に驚かされるのとともに、そんな会場がびっしりと埋まっている様子に今回の映画の注目度の高さも感じさせられた。

そういえばこの映画って有名監督と国枝里香の初タッグ!とかなんとかで、制作が発表されたときからすごい話題になってたっけ…

以前見たそんな情報番組のことを思い出しながら、目の前の大きなスクリーンを見上げる。

しかもど真ん中の最前列…

そう、ほんの数時間前に槙くんが用意してみせた席は3階まである大きな会場の1階最前列のど真ん中だったのだ。

「あの…そんなに見つめられると照れるんですけど」
「っあ、ごめん!その…槙くんって業界の人か誰かと知り合いなの?」

こんな特等席をあんな短時間でどうやって用意したのか。
そんな思考のままに隣にいる槙くんの顔をじっと見つめてしまっていたようで、慌てて視線を逸らして言葉を紡いだ。

「まぁ知り合いといえば知り合いですかね…」
けれど彼の口から出た回答はそんな曖昧なもので。
「まさかこんな席だとは思ってなかったです!楽しみだなぁ」なんて天使の顔で笑うから、またそこで私は追及出来なくなってしまった。
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