極上求愛～過保護な社長の新妻に指名されました～

――スタッフ間での打ち合わせ、各所の手配等も終えて無事に迎えた撮影当日。

リズムを刻むように鳴るカメラのシャッター音。
「いいね、そのままの角度で少しだけ動きつけてみようか」
合わせて白く光る、眩いフラッシュ。
「じゃあ次は目線こっちにくれるかな、里香ちゃん」

ほんと、かっこいい…

合わせて響くカメラマンさんの要求に瞬時に応えながら次々と表情を変えていく…女優、国枝里香の姿にもう目を奪われずにはいられなかった。

最終決定となったテーマは『高貴な赤と、愛らしい赤』。
映画『ブラックルージュ』になぞらえた高貴な赤と、国枝里香の新たな一面として私が提案した愛らしい赤…その二面構成で進めることとなり、セットや衣装も２パターン用意されている。

「それでは国枝さん、今から３０分ほど休憩になります」
次のセッティングが始まる合図であるその言葉に、控えていたスタッフたちが再び忙しなく動き出した。

…よし！１０分で終わらせよう！

腕時計に目を向けて時間を確認してから、頭の中でこれから話すことを思い浮かべていく。合間のこの時間内に里香さんに軽いインタビューをさせてもらうことになっているからだ。

「里香さん、お疲れ様です！」
資料を持って椅子に座る彼女に声を掛けると、顔を上げた里香さんがふわっと微笑んでくれる。

ん？この笑顔どこかで…

先ほどまでのクールな表情が消えた…おそらく彼女の素に近いその笑顔。
それがなぜか一瞬誰かと重なった気がして思考を巡らせたけれど、結局答えは出てこなかった。