極上求愛~過保護な社長の新妻に指名されました~
まさか最上階とは…
新卒の男の一人暮らしでこんなとこに住んでるって、ほんと槙くんって何者なの…

只者じゃないと思ってはいたものの、予想をはるかに上回っていく彼の謎がさらに深まった。

っていや、そうじゃなくて!

とりあえず目の前の状況に納得をして、高熱を出しているらしい彼の様子を見に来たのだという本来の目的を思い返しチャイムを押す。

…けれどいくら待っても返答はなく。少し考えた結果、次は電話を掛けてみることにした。

「…もしもし」
「あ…槙くん?」
数回のコール音のあと受話器から聞こえた小さな槙くんの声。それは明らかにいつもと違っている。

「体調どう?って聞くまでもなさそうだね…あの、私お見舞いに」
「大丈夫です」
言い終わるより先に、私の言葉は被せてきた槙くんの声に遮られた。

「いや、どう考えても大丈夫じゃないでしょう」
「大丈夫です。世話焼きな茜先輩だからお見舞いに来てくれるとか言いそうだけど…来ちゃだめですからね」

ば、ばれてる…

「だめとかじゃなくて、私も心配なの。少し顔見たら帰るから…鍵だけ開けてくれない?」
「鍵って…茜先輩、今どこにいるんですか?」
「槙くんの部屋の前」
「…」

観念したのか、少しの間を空けてから「わかりました」と呟く声が聞こえて。数秒後…ゆっくりと目の前の扉が開いた。

「っ!」
少し開いた扉から見えた槙くんの顔はマスクで半分隠れていてもわかるくらいに真っ赤で。さらに額に貼られている冷えピタは効果を失ったかのように半分ほど取れかけている。

「…じゃ」
本当に一瞬顔を見せてドアを閉めようとする槙くんを止めるように、すんでのところでドアの隙間に片足を突っ込んだ。
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