極上求愛～過保護な社長の新妻に指名されました～

「あ、先輩おかえりなさい」
「ただいま…って、どうしたの？」
「なんでもないですよ！ちょっと今日はやる気がみなぎっちゃって！」
「あ…そう、なの？」

デスクに戻ると、そこにはものすごいスピードでタイピングをする美月ちゃんがいて。

「あ、槙くん知らない？」
「っ、槙くんですか？さ、さぁ…？」
高速で動かされていた指がピタッと止まり、美月ちゃんの目線が不自然に泳いだ。

「やっぱり何かあった？私でよければ話聞くよ？」
「あ、えっと…」

…明らかにどこか様子のおかしい美月ちゃんが口を開きかけた、まさにそのとき。

「茜先輩」
「ひい…っ」
「え？」
後ろから聞こえたその声に先に返事をしたのは、なぜか美月ちゃんで。

「なんですか、人をおばけみたいに」
「いや、なんでもないでーす…」

美月ちゃんの顔があからさまに槙くんと反対方向を向いて固まっているけれど、そんなこと気にしないとでもいうように彼は言葉を続けていった。

「茜先輩、今日上がってから少しお時間いいですか？」
「うん、もちろんだよ」
「ありがとうございます」

それだけ言うと…槙くんは自分のデスクに腰を下ろし、黙って仕事に取り掛かっていった。

「あ、美月ちゃんさっきなんの…」
「いえ、忘れてください！大したことじゃないので！」
「そ、そう？わかった…」

なぜか必死な様子の美月ちゃんのことは心配だったけれど…しつこく聞くのも違うかと思い、私も自分の仕事に取り掛かることにしたのだった。