極上求愛～過保護な社長の新妻に指名されました～

「昨日はすみませんでした」
少しの間のあと、囁くような槙くんの声が聞こえて。
こちらに向けられている瞳は、嘘なんかじゃなくて、真剣なものだと思った。

「個人的な感情で先輩のこと傷つけました」
「…っ」
「茜先輩にはちゃんと謝りたくて。…アイツのことは相変わらず嫌いですけど」

アイツ…っていうのは、雪さんのことなのだろう。

「でも」
一度言葉を切ってから、意を決したように言葉が紡がれた。

「今のあの人が、茜先輩のことをちゃんと大切にしてるっていうのは、まぁ認めてもいいかなって」
「なにそれどういう…」
「今日サシで話したんです、あの人と」
「えっ、そうなの！？」

なんでこんなにも彼が雪さんのことを嫌っているのかはわからない。
けれど、２人の関係がいつの間にか微妙に好転していたらしいその事実に、なんだか少しほっとした。

「俺たちがどういう関係なのかとか、聞かないんですか？」
「うーん、聞かないっていうか…」

２人の関係を聞くこと、それはすなわち雪さんの過去に触れるということで。

「過去のことなんか気にならないって感じですか？大人ですね」
「いや、気になるよ。正直すっごく」
「え、じゃあなんで…」
「大切なことなら、雪さんから話してくれると思うから」

ごく自然に口から零れ出た言葉に、槙くんが一瞬目を見開くのがわかった。