極上求愛~過保護な社長の新妻に指名されました~
それから雪は、それまでの女関係を断ち始めた。
雪自身は何も言わないから、それを教えてくれたのはその頃から彼の傍にいたユウだったのだけれど。
やっぱりそれは嬉しくて…私は幸せだった。

だけどそれと同時に私と雪の関係が学校中に知れ渡り、すぐに嫌がらせが始まった。
根も葉もない噂。下駄箱のカミソリに、脅迫状まがいの手紙。
それでも心配を掛けたくなくて、雪には黙っていた。

…そんなある雨の日。
放課後の体育倉庫に閉じ込められた私を助けにきてくれた雪の手を…私は拒絶してしまった。

自分は大丈夫だと思っていた。雪と一緒に居られて幸せだったから。
それでもいつの間にか私の心は、限界に来ていたようで。

同時にその時、大好きだったはずのモデルの仕事も苦痛でしかなくて。
生半可な覚悟でやっていけるほど甘い世界なわけがないって、わかっているつもりで全然わかっていなかった。
他人を引きずり下ろすことも厭わない競争社会の中で、私は抱えるものの重さに耐えられなくなっていた。

「ごめん…雪」
心配してくれる優しいあの手を振り払ったあの瞬間、私を見つめていた雪の顔はしばらく頭から離れなかった。
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