極上求愛~過保護な社長の新妻に指名されました~
わずかに存在するその距離で、時々触れては離れる肩。
なんとなくその隙間をもどかしく感じていると、ことんとその部分に小さな重みがかかった。

「こうしててもいい?」
「…はい」

今日も一緒にいたいっていうのはさすがにちょっとわがままかな…

明日も仕事だし、と理由を付け加えて心の中で言い聞かせるけれど…不意に届く雪さんの香りが、私の鼓動と気持ちを溢れるさせるように高めていく。

やっぱりまだ、帰りたくない…

「茜」
あっと思った時には雪さんの顔が近づき、シートに背中を押しつけられながら…深く口づけられていた。

っ、運転手さんもいるのに…!

抗おうとするけれど、濡れた舌で優しくなだめるように掻き回されて身体の力が抜けていく。

「っ…ん、ぅっ…」
「そんな顔されると、帰したくなくなる」
「っ…」
「ねぇ茜は…どうしたい?」

艶やかな瞳に見つめられて、鼓動が高鳴り、呼吸が乱れる。

「帰りたく…ないです」
囁きにも似た小さな私の返事を聞いて、ちょっぴり意地悪で満足そうに雪さんが微笑む。
そうして身体に力が入らないまま、タクシーは家の前で停まった。

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