極上求愛～過保護な社長の新妻に指名されました～

あぁ美味しかった、全部が美味しかった…

終わってみると今日の時間をわりと楽しんでいた自分に少し驚きながら、お店の人からコートを受け取る。
そのまま財布を取り出そうと鞄の中に手を伸ばしかけたけれど…違和感を感じて、その手を止めた。

「お支払いは…」
「もう払ったよ。俺から誘ったのに、茜ちゃんに払わせるわけないでしょ」

当たり前のようにそう言った相沢社長は、笑顔で見送ってくれる女将さんに背を向け歩き出す。
そんな彼の背中に追いついたところで、自分よりも少し高いところにある顔を見上げた。

「ご、ごちそうさまでした」
「いいえ」
優しい微笑みのあとに流れた少しの沈黙。
最初よりも少しだけ居心地の良くなった空間の中で、相沢社長がもう一度ゆっくりと口を開いた。

「茜ちゃんさ」
「はい？」
「俺と結婚してくれない？」
「…え？」

言葉の意味がよくわからない。
いや、正確には言葉の意味はわかるけれど、私に向けられるその意味がわからない。