極上求愛～過保護な社長の新妻に指名されました～

「わー鞄どこに置いたっけ！？」
「そこそこ、ソファの上！」
「あ、ほんとだ」
「会う前からこんなんで大丈夫なの、茜…」

自分が心配なことは、自分が一番わかってるよ…
なんて焦る気持ちには関係なく、時計の針は進んでいくわけで。

「やばい、もう行かないと！」
「心配だなぁもう…あ」
その瞬間、にやっと笑った茉優を見て嫌な予感がしたのは…気のせいじゃなかった。

「君はたしか茜ちゃんの会社の…巴さん、だったっけ？」
「数回お会いしただけなのに覚えてもらえてるだなんて、光栄です。ちなみに彼女はもう一人の同居人の…」
「高梨夕です、はじめまして」
「はじめまして、今日は茜ちゃんのことお借りします」

直接話してどんな男か確かめる！そう言って見送りに来た茉優と、引っ張ってこられた夕。

「ふつつかものですが、茜のことよろしくお願いします」
「はは、責任をもってお預かりします」

そんな２人と相沢さんとの会話はもはや彼氏が実家に挨拶にきた場面でも見ているかのようで、頭が痛くなったのは言うまでもない。

「じゃあ行こうか、茜ちゃん」
そうして茉優と夕に見守られながら乗り込んだ車は、ゆっくりと走り出したのだった。


「知人への挨拶から車内へのエスコートまで、全てがスマート」
「あれは、なんていうかレベル高いね」
「なんか出来る大人の男を具現化したみたいだった」
「もう完全に向こうの圧勝、茜に勝ち目なし」
「なんかいろいろ経験の乏しい私でもそう感じたよ」
「帰ってきた茜から話聞くの、めちゃくちゃ楽しみだわー」

去っていく車を見送った２人がそんな会話を交わしていたことを、私は知るよしもなかった。