極上求愛~過保護な社長の新妻に指名されました~
「それにしても相沢さんって本当に顔が広いんですね」
「まぁ仕事柄ね。人との縁はなにより大切だと思ってる」

ここまでの車内で何が食べたいか尋ねられた時、意見を求められるといつも何でもいいと答えてしまうタイプの優柔不断なわたしに相沢さんが提案してくれた3つのお店は、よくよく聞いてみると全て知り合いの経営しているお店のようだった。

「それに食べることは俺も好きなんだよね。あ、ちなみに母方の実家は弁当屋だし」
「え!そうなんですか?」
「一番好きなのはハンバーグ弁当だね」
「ハンバーグ!?」

大人でスマートな相沢さんとお弁当屋さんが正直結びつかなくて。

「意外?」
「意外というかなんというか…いや、はい。意外です」
「はは、結局意外なんだ」

思わず勢いよく聞き返してしまった手前、素直にそう答えると…相沢さんはまたさっきの子どもみたいな顔で笑った。

…その瞬間、先ほどのときめきような感覚とはまた少し違う音が、胸の奥で響く。

なんだろうこれ…

大人の余裕で迫ってきたり、子供みたいに笑ったり…いろんな表情を見せるこの人のことをもっと知りたい、そんな気持ちがいつの間にか心の中に生まれていた。
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