極上求愛~過保護な社長の新妻に指名されました~
初めて会ったときのことは、忘れたくても忘れられない。
でもあのときに感じていた緊張感や不安な気持ちは、もうない。

一緒にいると…ドキドキして、だけど居心地はよくて。
いろんな相沢さんを知れば知るほど、もっとこの人のことを知りたいさえと思う。

でも。

「…わからないんです」

俯けていた視線を上げて、目の前の瞳を見つめ返す。
真っすぐに私を見つめるその瞳は、真剣で、揺るぎない…そんな印象を私へと与えた。

「ごめんなさい今さら…だけどちゃんと今思ってること、伝えたくて」
「うん」

急かすでもなく、遮るでもないその微笑みが、つっかえてしまいそうになる私の中にある言葉を引き出していく。

「相沢さんのこと、もっと知りたいです。でもまだ…こわくて」
「こわい?」

今どうしたいのか、なんて言いたいのか。
それだけ考えればもっと素直に答えられるのかもしれない。

この状況になってからぐだぐだ悩む私は心底めんどくさい。
だけど慎重になってしまうのだから、もうしょうがない。

付き合うまでに相手と何時間一緒に過ごさなきゃいけないなんて決まってなんかいないし、考えたこともなかった。
むしろ今ここに茉優がいたら、そんな悠長なこと言ってる時間なんてないって突っ込まれそうな気さえする。

…でもきっと、私の中に引っかかっているのは“時間”だ。
誰かを信じて自分の内側に受け入れるのに、私にはある程度の時間がおそらく必要なのだと思う。
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