極上求愛~過保護な社長の新妻に指名されました~
20代は早い早いと周りの先輩方に聞いてはいたけど、この歳になるとその言葉の意味を嫌でも実感させられる。

3人そろって、今年で27歳。
それは彼女たちと出会った大学時代から、もう10年という時が経とうとしているということだ。

あの頃描いていた未来予想図では、たしか私はもう結婚していることになっていたはずなんだけどなあ。

前の彼氏とは6年間付き合って、この人と結婚するんだろうと漠然と思っていた。
だけど彼からその二文字が出ることはなくて。

言うなれば、信頼しているけど将来が見えない…そんな感覚。

結局生まれた溝を埋められないまま別れた直後にはそれなりに落ち込んだけど、最近はようやく吹っ切れた気がしていた。

結婚がちらつく年齢との間で葛藤はあるものの、今はいちばん身近にいる茉優と夕がフリーなこともあり、良くも悪くもそこまで危機感を感じているわけでもない。

そしてなによりも…今は仕事がとても楽しくて。
憧れだった雑誌編集者になった毎日は、忙しいながらもやり甲斐があって、充実感もある。

「私ちょっと風に当たってくるね」
「…大丈夫?しんどい?」
「ううん、大丈夫。またスッキリしたら戻ってくるね」
「ん、わかった」

茉優にこそっと声を掛けて、日差しの降り注ぐテラスに足を向けた。

3人でいるのは楽しい。だけどこの生活が一生続くとも思っていない。
素敵な人が現れたら、それぞれに幸せな道を歩いていけばいいと思う。

辛いときいつもそばにいてくれた2人には、とびきり幸せになって欲しいから。
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