極上求愛~過保護な社長の新妻に指名されました~
時折、優しいってなんなのかを考えることがあった。
喧嘩するのが嫌で、最後まで伝えないまま気持ちを制御して逃げていた。

…相手のことを思いやるのと、気持ちを押し込めてしまうのとではきっと意味が違うのに。

「何を考えてるのかわからない」
それが私が過去の恋愛の中で言われ続けてきた言葉だったから。

傷つくことを覚悟して、最後まで本音をぶつけたことが…きっとなかった。

「茜ちゃん」
「…はい」
私の名前を呼んだその声は、どこまでも優しくて。
その声に、目の前の彼が纏うその空気に。すーっと気持ちが冷静さを取り戻していく気がした。

「俺が茜ちゃんを素直にさせてみせるから、茜ちゃんはただそのままで、俺の隣にいて」

私の中にあった曖昧な気持ちが、ゆっくりと…だけど明確に色を付けていく。

「…はい」
小さな声で呟いた瞬間、温かい腕にぎゅっと抱きしめられていた。

「相沢さん」
「ん?」

なぜだかわからないけど、どうしても言葉にしたくなって。
私ははっきりと芽生えた気持ちに名前を付けるように口を開いた。

「…好きです、相沢さん」
「…それ、可愛すぎない?」

こんな風に、誰かに好きだと言ったのなんていつぶりだろう。
少し恥ずかしい気持ちはある。けれど、それ以上に伝えたかった。
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