極上求愛~過保護な社長の新妻に指名されました~
「相沢さん…?」

小さな声で名前を呼ぶと、ゆっくりと腕の力が緩められようやく顔を上げる。するとそこにあったのは…見たこともないような余裕のない相沢さんの困ったような顔だった。

「まずは、謝らせて。1週間連絡出来なくて本当にごめん」
「いえ…お仕事忙しかったんですよね」
「うん、急に出張が入って少し…さっきこっちに戻ってきた」

さっき…
帰ってきてすぐ会いに来てくれたのかな…

「いつものくせで私用の携帯家に置いたまま出かけちゃって…情けないよな、ほんと」

はは…と申し訳なさそうに笑う相沢さんの目元は少し赤くて、疲労の色がうかがえる。

「って仕事言い訳にして、携帯忘れたとかこんな話信じてもらえなくてもしょうがな…」
「相沢さん」

不安だった。だけど、今こんなにも一生懸命言葉を探して気持ちを伝えようとしてくれるこの姿があなたの全てなんでしょう?

「お疲れさまでした。会いに来て下さってとっても嬉しいです」
心の中にある1番伝えたい思いを言葉にして、今はただ目の前の人を抱きしめた。

「…ありがとう」

私の腕の中で安心したように息をはいた彼の両腕が、ゆっくりと私を包み込む。そして今日までの寂しさを埋めるように、私たちは強く抱きしめあった。
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