極上求愛~過保護な社長の新妻に指名されました~
「あとは何かできることあるかな…」

定時に仕事を切り上げ、初めて合鍵を使って雪さんの家にお邪魔してから早数時間。

お風呂を沸かしてご飯の用意も済ませたところで手持ち無沙汰になり、リビングのソファの上で正座になりながら頭を悩ませる。

このところ帰ってくるのが日をまたぐことも頻繁にあるみたいだったしなぁ…

今日家に行ってもいいか連絡をすると、早く仕事を終わらせて帰ると言ってくれた雪さん。
だけどきっと疲れているだろうし、とりあえずちょっとでもゆっくりしてもらえたらいいな…それで、誕生日のことはそれから話そう。

そんなことを考えながらふと時計に目をやったときちょうどドアの開く音が聞こえた。

「っおかえりなさい!」
「ただいま、茜ちゃん」

玄関まで出迎えに行くと、私の声に答えるように雪さんがふわっと微笑んでぎゅっと抱き寄せられた。

「…っ、雪さんお疲れ様です」
「うん、ありがとう」

外の冷気をまといここの空気よりもひんやりとしている雪さんの身体を温めるように背中へ腕を回し、ぎゅっと抱きしめ返す。

「キッチンお借りして、簡単なものですけど夜ご飯作ってみました!あとお風呂も沸いてます!ご飯とお風呂、先にどっちにしますか?」

久しぶりに会えた嬉しさと少しの恥ずかしさを隠すように、雪さんの腕の中で言葉を紡いでいく。

「してほしいことがあったらなんでも言ってくださいね!…雪さん?」

言いたいことを言いきってから雪さんからの反応がないことに不安になり名前を呼ぶと、ゆっくりと抱きしめる力を緩めた雪さんがそっと身体を離した。


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