極上求愛~過保護な社長の新妻に指名されました~
「今まで誰かといてこんなに気持ちが落ち着くことって正直なかったから、自分でもちょっと驚いてるんだけど」

こぼされた言葉の数々が優しくて、愛しくて、胸がどうしようもなく苦しい。

「だからそんな悲しそうな顔しないで」

私の心ごと抱きしめるみたいに、雪さんの両手が私の頬を優しく包み込む。

「っ、雪さん…」
「もっと自惚れるくらいに胸張って俺の隣にいてよ、茜ちゃん」

どうして雪さんはいつもこんなに、いとも簡単に私の心を軽くしてしまうんだろう。

「はい、ありがとうございます…」
「お礼を言わなきゃいけないのは俺の方だから」

こつんと甘えるみたいに雪さんが私の肩に頭を預けるようにしてもたれかかった。
頬に触れる雪さんの髪からは自分と同じシャンプーの匂いがして、甘く胸をくすぐられるまま穏やかな心地よさに身をゆだね、自然に瞼を閉じた。

こんな時間がずっと続けばいいのにー…

「このまま明日も明後日もずっと一緒にいられたらいいのに」

心の中で密かに願った思いを言葉にするかのように聞こえた声に目を開くと、隣で安心したように瞼を閉じる雪さんがいて。さっきの不安な気持ちなんて消え去ってしまうくらい幸せな気持ちが溢れて止まらない。

「雪さん、こんなとこで寝たら風邪引いちゃいますよ」
「まだ寝ないから大丈夫…」

いつもよりも甘くとろんとした声色の雪さんを思わず可愛いと思ってしまったことは口には出さずに、さらさらの雪さんの髪を撫でていく。

「ベッド行きましょう、雪さん」

駄々をこねる雪さんをちょっぴり強引に寝室まで連れていき一緒にベッドに横になると、1分もしない内に気持ちよさそうな寝息が聞こえてきた。

「ゆっくり休んでくださいね」
そう呟いてから眠る雪さんの頰に触れるだけのキスをした。彼がいつもしてくれるみたいに。

誕生日のことは言いそびれてしまったけれど、また機会があればでいいか…そんなことを頭の片隅で考えながら、大好きな人の腕の中で私もゆっくり瞼を閉じていった。
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