極上求愛~過保護な社長の新妻に指名されました~
「これ、いつのまに用意してくれたの?」
「もともと茜に渡すつもりで用意してたんだ、誕生日プレゼント。まさかタイミングよくお前が自分の靴壊すとは思ってなかったけど…ま、だからちょうどよかった」
「あ、ありがとう…」

驚きを消化しきれないまま、だけど嬉しい気持ちも本当で。
いろんな気持ちが心の中で広がっていった。

「ちなみにそれも茜に渡そうと思って用意したやつだから」

秋ちゃんの視線は私の胸に抱えられたままだった花束に向けられていて、言葉がそれを差しているのだと気付く。

「なんか押し付けるみたいに渡して悪かった」
「あ、いや、それは私が転んでたからだし…」

手の中にある花束が自分に向けて送られたものだと認識した瞬間、何だか妙に気恥ずかしさが込み上げた。
誕生日に男の人に花なんてもらったことがなかったから。

「今度は転ぶなよ?」
「っ、大丈夫だよ!」

口角を上げて意地悪に微笑む秋ちゃんに負けじと言い返した。
秋ちゃんからのプレゼントの数々に驚いたから…それ以上に、一人の女として扱われていることが伝わってきたから。そんな早くなる鼓動の正体に気付かないふりをしながら。

そうして初めて履いたはずなのに不思議なくらい足に馴染むパンプスの履き心地の良さを感じながら、私はエントランスをくぐり抜けた。

< 84 / 208 >

この作品をシェア

pagetop