極上求愛~過保護な社長の新妻に指名されました~
相沢さんと何があったのかはわからないけれど、茜は泣いていた。誕生日の今日、それが事実で。
小さい頃から、茜は人に泣いているところを見られるのが嫌いだった。
無駄に強がりというか、なんというか。人に甘えるのも下手くそで。
そんな不器用な茜のことを傍で守りたいってずっと思っていた。大切だった。
茜の涙を見たのは小さい頃に1回と、樹と別れることになったときの2回だけ。
きっと自分が気持ちを伝えたら茜を困らせる、そう思って今まで言わなかった言葉をあんな形で自分が口に出すとは思ってもみなかった。
茜の涙を久しぶりに見て自分の中で何かが外れたんだ。
気付いたら、抱きしめていた。抱きしめずにはいられなかった。
「花言葉とかなんか綺麗そうだね。秋ちゃん知ってる?」
だから、茜が知るのは花の名前だけでいい。
「…いや、知らない」
「そっかぁ残念」
好きだとか言ってる時点でもう十分困らせてるんだよな~と心の中で自分自身に呆れながらも、水野先輩に聞いて知っていた花言葉には知らないふりをした。
花屋で見かけて迷うことなく手に取ったその花に込められた、溢れそうなその思いに蓋をするように。