サワーチェリーパイ 6ピース
顔を上げると、先に帰ったはずのルナちゃんが満面の笑みを浮かべていた。


「駿府君、シスターから差し入れだって」
「あ、ありがとう」
「毎日、こうやって遅くまで頑張ってるんだねー。初めて聞いたよ」
「ここでやらないと、すぐに他の勉強を始めて忘れちゃうから」


隣に彼女が腰を降ろすと、またあの香りが漂う。


ココアの甘い匂いと、シャンプーの甘い匂いが入り混じり、僕の胸の中をくすぐる。


「今日ね、シスターに悩み相談したんだ」
「へぇ」


話に乗る余裕なんか無いのに、話始めてしまう彼女。


きっと、シスターに相談しても解決しないから、僕にも話してスッキリしたいんだと思っているんだろう。


「志望校とか? でもそれなら学校の先生とか、塾の先生の方が……」
「違うの、人生相談」
「人生相談って、何かあった? 」
「まあねー、人の心は難しいみたい」


15歳でそんなセリフが出てくるなんて、どんな悩みなんだろう。
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