ありがとうって何回言っても足りないよ。
ーーーカシャーンッ!


「はっ⁉︎」



彼が驚いた声を出しながら背後を振り返る。


触れられたくない一心で彼のスマホを投げてしまったのだ。


「ちょっ……ふざけんな!」


ーーーなんて言う彼の声はもちろん聞こえない


だって、今あたしはボルト並みの速さで逃げているから。


捕まったら犯される!


まずい、まずーい!



「あのクソ女……」

彼が割れたスマホを拾い上げながら、怒りに震えていたことなんてあたしは知らない。
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