午後4時30分 有馬先輩の秘密の彼女
「あ、いけない!私、体育館の劇見に行こうと思ってたんだよね。よかったら一緒に行かない?」

「劇…」



それって…有馬先輩が出る奴だよね…



「私でいいなら…」

「ほんと!?やったあ!あ、陸くんは?」

「…俺も行く」

「え?」



私は驚いて固まったけど、瑠衣さんに手を引かれてそのまま体育館へ向かう。


…その1メートル後ろ位を陸もついてきてて。



これ…どういう状況?



「私さ、この高校に元カレがいるんだ」

「え?」

「こっちからフったくせに図々しいけど、私にとっては忘れられない人でさ…」



忘れられない…ひと…?


その単語に、私の心臓はドクンと嫌な音を立てた。



『雄飛には、忘れられない人がいる』



いや…まさか…まさかね…



「ー 瑠衣…?」



渡り廊下で立ち止まる私たちに、まだ少しだけ冷たい春の風が吹き付ける。


指先が震えて、声も出なかった。



ただ…目の前の景色が信じられなくて。



ー 神様は、どうしてこんなにも意地悪なんだろう。

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