午後4時30分 有馬先輩の秘密の彼女
* * *
「私とユウくんの話は…聞いた?」

「…はい。文化祭の日、陸から」



駅前のオシャレなカフェに入り窓側の席に座ると、瑠衣さんは早速本題に入る。



「…そっか。あの日茜ちゃんごかいしてたっぽいし、昔のことは少しにして、今のことをメインに話すね。」



目の前に置かれた紅茶にそっと口付け、瑠衣さんはゆっくりと話し始めた。



「あたしとユウくんは、中学生の時付き合ってたけど中3の冬に別れたの。フッたのはあたしのほう。けど…ユウくんは嫌だって言わなかった。きっと…責任を感じてたから」



「責任…」



きっと、瑠衣さんのケガのことだ。



「茜ちゃんには言っておきたい。文化祭の日にユウくんに会う前にも言ったけど…あたしは、まだユウくんのことが好きなの」



瑠衣さんの力強い眼差しと目があい、私の胸は張り裂けそうに痛んだ。


…瑠衣さんがフッたんじゃないの?


私の好きな人…有馬先輩を。

私が欲しかった “ 有馬先輩の彼女 ” っていうポディションを持っていたのに、捨てたのは瑠衣さんなんでしょ?

私がやっとの思いで手に入れた場所は、瑠衣さんの身代わりなのに…

それなのに、今更…



「瑠衣さんは、ずるいです…」

「…え?」

「あなたが先輩をフッた時、先輩は何も言わなかった。それはあなたのため…けど、先輩は瑠衣さんのことが好きだった…!私は、ずっと先輩の “ 忘れられない人 ” を超えたかった。負けたくなかった…!なのに、やっと築いた関係を今更壊すんですか…?私は…私は…!」



こらえていた涙がパタッと机に水たまりをつくる。


感情を支配され自分でも驚くくらい、どんどんひどい言葉が出てきた。


「茜っち?…と、瑠衣…?」



誰かに呼ばれてそっちを向くと、そこにいたのは呆然と立ち尽くす陽先輩だった。



「何、してんだよ…瑠衣」



私が泣いていることに気がついたのか、陽先輩の声はいつもより低くて。

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