午後4時30分 有馬先輩の秘密の彼女
* * *
「―落ち着いた?」

「…はい、ありがとうございました。迷惑かけてごめんなさい」



私はマグカップをガラス製のテーブルにコトリと置き、陽先輩に頭を下げた。



「はは、そんなに固くならないでよ。もっとリラックスしていいから」



カフェをあとにし、泣き続ける私を陽先輩はお家にあげて紅茶をだしてくれた。

今はこんなにニコニコしてる陽先輩だけど、瑠衣さんに対しては…すごく冷たかった。


そして、何かへの強い怒りを感じた。



陽先輩に強く掴まれて、まだ少し痛い右手首がその証拠。


心配してくれてるんだな、と右手首をさすると、陽先輩はこっちをマジマジと見て。


「はぁ……」



“ 後悔 ” でも吐き出すかのように、深い深いため息をついた。



「先輩?」

「あぁ〜、マジでごめん。手首痛いんでしょ?あの時は怒りでつい力入れちゃって…女の子傷つけるとか最低だな、俺…」


あぁ、やっぱり原因は私か…



「傷って…少し腫れてるだけだし、気にしないでください!先輩が私を心配してくれてて、少し嬉しかったです」



最低どころか、最高の先輩だよ。

こんなにも優しい先輩と仲良くなれたなんて、運がいいにも程がある。



「おっと、もう6時か…さてと、暗くなっちゃう前に帰らないと危ないし、そろそろお迎え呼ぼうか」

「迎え?」



まだ明るいし、怪我をしたわけじゃないから自分で帰れるのに。

ってか両親はまだ仕事中だし、迎えに来れる人なんかいない。



「茜っち、どっちか選んで?どっちに来てもらうか」

「どっちって…」



パッと思い浮かんだのは、あの人とあの人。

でも…


「どっちも大丈夫です。私ひとりで」

「ダメ。茜っちが選べないなら…1番早い方法にしよう。よし、ちょっとこっち来て?」



陽先輩に手招きされ、先輩が座るベッドに少し間隔をあけて座った。



「…ごめんね、好きなだけ殴っていいから」

「え??」



スマホのカメラを起動して内カメラにした陽先輩は…


チュッ


と可愛らしいリップ音を立て、私の頬に口付けをした。

同時に部屋にシャッター音が響いて。



…状況が理解出来ず呆然とすること10秒。

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