午後4時30分 有馬先輩の秘密の彼女
「陽先輩はおもしろがってあの写真を先輩に送ったんだと思います。」



有馬先輩の詮索するような瞳と目が合うのが怖くて、私は俯いた。



「おもしろがって、ねぇ…なんで逃げなかったの?逃げる隙くらいあったでしょ?彼氏でもない陽にキスされそうになって逃げなかったのも事実だろ?」



どうしてそんな冷たいことを言うんだろう。

先輩こそ瑠衣さんのことを忘れられないくせに

先輩の彼女は私なのに…



「―に…」

「え?」

「先輩こそ…私のこと好きじゃないくせに…!忘れられない人がいるくせに…!どうして期待させるようなことばっかり…」



自分の彼氏に忘れられない人がいて、しかもそれはお互い思ってて…この気持ちが先輩に分かる?


先輩の親友にも、自分の幼なじみにも反対されて…誰も応援してくれなかったこの気持ちが。



「…っ」



陽先輩の部屋で止まったはずの涙が溢れ、私は悔しさと情けなさでいっぱいになり唇を噛み締めた。


涙の味と、ほのかに血の味が口の中に広がる。



どうして、だまってるんですか?



「…わかんねぇ…」

「…え?」


「意味わかんねえ、勝手に決めつけてんじゃねえよ…!」


珍しく声を荒らげる有馬先輩に目を見開いたとき、乱暴なキスが降ってきた。


「…っ!!」



感情をぶつけるようなキスが繰り返され、力が抜けてしまった私は先輩の胸に頭を預けた。


先輩は…何を考えているの?

瑠衣さんのことが好きなんじゃないの?

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