午後4時30分 有馬先輩の秘密の彼女
先輩の手には、ボロボロのサッカーボール。


表面には “ ありまゆうひ ” とひらがなで書いてあった。



「…これは幼稚園に入園したての頃に母さんが買ってくれたボール。他のは全部捨てたけど、これだけは無理だった」



寂しそうにボールを見つめる有馬先輩に、胸がツキンといたんだ。


あぁ、先輩はサッカーが好きなんだ。

やめてしまった今でも、変わらずに。



「中3の時瑠衣がケガをしてサッカーができなくなって、俺もろくなサッカーができなくなって、やめた。瑠衣から夢を…全てを奪ったのは俺だから」

「…もう、サッカーはしないんですか?」

「…バカ、サッカーがしたいなんて言える立場じゃないだろ」



苦しそうな表情をする先輩は、今にも泣き出してしまいそうだった。


「それは、瑠衣さんに対する同情ですか?それとも…罪悪感?」



別れたのは、瑠衣さんのため。

先輩たちは両想いで別れて、今ではお互いがお互いを忘れられない元恋人。



今告白されたら…どうするんですか?

私をフッて、瑠衣さんのもとへ行ってしまうんですか?


「人の夢を奪った俺に、夢を持つ資格なんかない」

「…そんな」

「けど…ひとつだけ言っておく。俺の好きな女は瑠衣じゃない」

「…へ?」

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