嫌われ者の怪物と空っぽの少女

１：物語の始まり

緑が広がる森の中。

ツルや草で覆われた、肌色の小さな建物。

その家からは、美味しそうな匂いが漂っていた。



｢…さぁできた！今日は魚介類たっぷりのスープですよ！｣


そう言って嬉しそうに笑うマユのおばあさんがキッチンから出てきた


その手には魚介類たっぷりのスープがあった



｢わぁ！私お魚大好きよ！｣


椅子に座っていたマユが大きく手を上げ、ばんざいをした。

おばあさんは自慢げにマユを見つめた。


｢えぇ。今日は少し奮発して魚介類を買ってきたのよ。マユちゃんの5歳のお誕生日ですからね｣


｢それにここは山だから、あまり魚介類は…わっ！？｣



マユは目をキラキラと輝かせて勢いよくおばあさんに抱きついた。


｢んふふ。おばあさん大好き！！｣



｢ふふ、全く、危ないですよ。スープがこぼれてしまいます。ほら、おかわりもありますから、たんとお食べ。｣



｢はーいっ！｣



そう言って、マユは席につき、おばあさんがスープを机に置いた。おばあさんも、マユの向かいの席に座った。



大きな窓の側で、窓いっぱいに広がる森の景色を眺めながら、おばあさんと朝食を食べる


いつもと変わらない日々



｢あぁほらほら…慌てないで、落ち着いて食べなさい？｣


｢えへへ…はーい｣


だけど


｢……｣


｢…マユちゃん？｣


ふと、スープを持った、マユの小さな手が止まった



｢……お父さんやお母さんもここにいたら、このスープも、もっと美味しかったのかな…お魚のスープ、もっとたくさんあったかな…｣



マユは大好きな魚介スープを、リボンの飾りのついたお気に入りのスプーンで弄びながら、小さな感情を漏らした