君を忘れるその日まで。
彼女は持っていたマーカーペンを置くと、そっと自分の肩に触れた。
「渡利くんの言う通り、前までソフトボール部に入ってたんだよ。
でも半年前に肩を故障しちゃって、やめたんだ」
「肩を故障、か。まぁ、スポーツマンには付き物だよね」
俺がさらりと返すと、彼女は驚いたような顔でこっちを見つめてくる。
「なに?もしかして怒らせた?」
「ううん、そうじゃなくて。随分あっさりとした返しだなぁって……」
「俺は当たり前のことを言っただけだよ。
それに、自分から聞いたことなのに勝手に気まずい気持ちになったら、君に失礼でしょ」
「…………」
持っていたマーカーペンを別の色に変えて色付けをしていると、しばらくして頭上からクスッと笑う声が届いてきた。