君を忘れるその日まで。


彼女は持っていたマーカーペンを置くと、そっと自分の肩に触れた。


「渡利くんの言う通り、前までソフトボール部に入ってたんだよ。
でも半年前に肩を故障しちゃって、やめたんだ」


「肩を故障、か。まぁ、スポーツマンには付き物だよね」


俺がさらりと返すと、彼女は驚いたような顔でこっちを見つめてくる。


「なに?もしかして怒らせた?」


「ううん、そうじゃなくて。随分あっさりとした返しだなぁって……」


「俺は当たり前のことを言っただけだよ。
それに、自分から聞いたことなのに勝手に気まずい気持ちになったら、君に失礼でしょ」


「…………」


持っていたマーカーペンを別の色に変えて色付けをしていると、しばらくして頭上からクスッと笑う声が届いてきた。

< 11 / 126 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop