君を忘れるその日まで。
足が、重たい。
たった一歩を踏み出すだけで、何分も費やしているような感覚だ。
優里の家に近づくたびに、嫌な考えが大きくなっていく。
やっとリビングに着いたころには、走ってきた時よりも動悸が早くなっていた。
「お茶くらいしか出せるものがないんだけど、いいかしら?」
笑顔で冷蔵庫に手をかけるお母さんに、俺は慌てて返事をする。
「あ、いえ、お構いなく。あの、優里は……?」
「こっちにいるわよ」
お母さんは俺の前を通り過ぎると、隣の部屋に続くふすまを開けてくれる。
「優里、祐樹くんが来てくれたわよ」
「優里……」