君を忘れるその日まで。
「私、渡利くんとは気が合いそうな気がするよ」
「それは嬉しい限りだけど、急にどうしたの?」
彼女の唐突な言葉に疑問符を浮かべれば、彼女は自分の右手を前に差し出す。
「これからは渡利くんじゃなくて、祐樹くんって呼んでもいいかな?」
「……俺は自分に向けられる好意を無下にするような嫌なやつじゃないから、喜んで受け入れるよ」
「あははっ、ありがとう。私のことも名前で呼んでくれていいんだよ?」
「女子を名前で呼ぶのは、彼女だけって決めてるんだ」
「それは意外だね。祐樹くんはもしかして純情キャラなの?」
「その言葉は余計だよ」
少しキツめの視線を送ると、「ごめんごめん」と笑顔で返される。
「じゃあ、あらためて。よろしく、祐樹くん」
「よろしく、佐城(サシロ)さん」
長らく待たせていた彼女の右手に自分の右手を重ねれば、彼女は嬉しそうな顔で笑った。