君を忘れるその日まで。
しつこく食い下がるみんなに隠すことは無理だと思い、仕方なく理由を話すことにする。
「実は俺、前住んでたところで事故にあったんだ。って言っても、事故のショックなのか、俺は高2の記憶…1年分くらいを忘れてたから全然実感ないんだけど。
記憶喪失ってやつだね。
ここに来たのは、前の学校には居づらいかなっていう考えと、療養のためかな」
「「「……………」」」
明るく言うと、みんなはなんとも気まずそうな顔を見せた。
「あー、そんな深刻なことじゃないから!
俺は覚えてないし、親も無理に思い出すことないって言ってるしね。
ここでは楽しく暮らしていこうと思ってるから、仲良くしてくれると嬉しい」
慌てて付け加えて笑顔を作ると、みんなも戸惑っていた顔を笑みに変えて返してくれる。
……うまく、やっていけるかな。
窓から入る潮風に吹かれながらそんなことを考えていれば、1限目の予鈴が辺りに響き渡った。