君を忘れるその日まで。
他愛のない話に、どちらからともなく笑みがこぼれる。
佐城さんは、いい人。
それが、俺が彼女に抱いた最初の印象。
転校初日、質問攻めをしてきた他の人たちとは違って、佐城さんはただ前を向いていた。
でも決して無関心なわけじゃなくて、本人は
いたって優しい。
授業でわからない所があれば教えてくれるし、校内の案内もこころよく引き受けてくれた。
夏休み前の体育祭の準備をした時や草むしりをした時だって、気まずくなることはなかった。
つまり彼女は、適度な距離のとり方を知っている。
相手の嫌がるようなことを自然と察知して、
そこには触れないでいてくれる。
だから、彼女との会話はまるで苦にならない。
俺にとって佐城さんは、この島の誰よりも話しやすい存在だと言えるだろう。