君を忘れるその日まで。
体育祭なんて、いかにもお祭りみたいな響きの名前で生徒をその気にさせて、運動しよう的な空気を前面に押し出している行事ではないか。
極力運動というものをしたくない俺や、運動能力に長けていない人たちからしたら、体育祭なんて苦痛以外の何ものでもない。
もはや体育祭は、学校側による新手のいじめではないのか、とさえ考えてしまう始末だ。
「渡利くんは何に出るの?」
思考回路をマイナスに寄せていると、最近よく話す前の席の女子が声をかけてきた。
「俺はなるべく体力を消費しないやつがいいな」
「そうなの?でも……」
言いながら顔を前に向けた彼女に、俺もその視線の先を追ってみる。
「着々と決まっていってるみたいだけど、今から入れるのかな?」
「え……」
前に集まっている男子たちの間から黒板を覗けば、確実に名前が埋まっていっているのが見てわかる。
「早く行かないと間に合わないんじゃない?」
「そうだね、教えてくれてありがとう。行ってくるよ」
彼女にお礼を言ってから、俺は急いで席を立った。