君を忘れるその日まで。
修学旅行
「祐樹くん、大丈夫?」
奈良行きの新幹線のなか、隣に座る佐城さんが心配そうに声をかけてくれる。
「ありがとう。もうだいぶよくなったよ」
取り戻した気力で微笑んで見せれば、彼女も安心したように笑った。
「元気がないと思ったら、まさか島から離れる時に船酔いしてたなんてね」
「引っ越した時以来だったから、感覚に慣れなかったんだと思うよ」
「そっか……ん?でも祐樹くん、あの時何か見てなかった?」
「あぁ、うん。京都に着く前にこれを読もうと思ってたんだけど、その前に酔ったから読めなかったんだ」
カバンから取り出して彼女に見せたのは、辞書ほどの厚みになったピンク色の封筒の束。
止めていたゴムを取って一番上の封筒を手に持てば、彼女はクスッと笑った。