君を忘れるその日まで。
「……思い、出した」
ふと蘇ったその記憶に、気づけば言葉をこぼしていた。
俺は、記憶の彼女とここに来たことがある。
俺が忘れてた高2の修学旅行に、俺は彼女とここに来ていた。
確かあのあと、持っていた鹿せんべいを全部食べられて、仕方なくもう一度買ったんだ。
相変わらず姿は思い出せないけど、彼女は笑顔で鹿せんべいを配っていた。
そんな彼女を見て、俺も自然と笑っていたんだ。
「祐樹くん、どうかした?」
気づけば目の前で、鹿せんべいを配り終えた佐城さんが不思議そうな顔をしている。
「顔、笑ってるよ。何かいいことあったの?」
「うん。また一つ、忘れてた記憶を思い出したんだ。高2の俺はここに来たことがあるらしい」
「…!じゃあ、これから回るところでも記憶が繋がるかもね」
柔らかな笑顔で告げた彼女に、俺も笑みを浮かべて頷くのだった。