君を忘れるその日まで。
『おぉ、これが東大寺……想像してたよりずっと大きいや』
『外観に圧倒されるのもいいけど、中に入らない?他の人たちはもう進んで行ったよ』
『みんなお馬鹿さんなんだから。外観だって和の感じが素敵で見てて癒されるじゃない』
『癒されるのは理解できないけど、確かに昔を感じさせるこの外観は、俺も綺麗だと思うよ』
『だよねっ?祐樹はわかってくれると思った』
『はいはい。それよりそろそろ行かないと、俺たちおいていかれるんじゃない?』
『そうだね、行こっか。ところで、中には何があるの?』
『……外観にばかり興味があって内観を知らないんじゃ、馬鹿と言われても仕方がないと思うんだよね』
『うっ……はい、私は馬鹿です……』
『素直に頷くなんて、珍しいね。旅行気分で小さな反発心も薄れたのかな?』
『旅行先で余計な言葉禁止!私はもとから素直な性格ですー!』
『君が素直だったことなんて、数えるくらいしか見た記憶がないんだけど。
でも、君は素直に頷くより、元気に言い返す方が似合ってるよ』
『……急な褒め言葉は嬉しいけど戸惑うよ。
っていうか、褒め言葉な気がしないんだけど?』
『ちゃんと褒め言葉のつもりで言ったから、喜んでいいよ』
『素直に喜べないのは、私の性格が悪いのかな?それとも祐樹の言い方なのかな?』
『君の性格じゃないのかな』
『祐樹の言い方のせいで、どんどん嬉しかった気持ちが削がれていくよ。ありがとう』
『どういたしまして』
『皮肉なんだから、素直に受け取らないでくれるかな』
『俺は誰かさんと違って、とても素直な性格の持ち主だから』
『嘘ばっかり言ってる人の言葉じゃないよ!────』