君を忘れるその日まで。


『おぉ、これが東大寺……想像してたよりずっと大きいや』


『外観に圧倒されるのもいいけど、中に入らない?他の人たちはもう進んで行ったよ』


『みんなお馬鹿さんなんだから。外観だって和の感じが素敵で見てて癒されるじゃない』


『癒されるのは理解できないけど、確かに昔を感じさせるこの外観は、俺も綺麗だと思うよ』


『だよねっ?祐樹はわかってくれると思った』


『はいはい。それよりそろそろ行かないと、俺たちおいていかれるんじゃない?』


『そうだね、行こっか。ところで、中には何があるの?』


『……外観にばかり興味があって内観を知らないんじゃ、馬鹿と言われても仕方がないと思うんだよね』


『うっ……はい、私は馬鹿です……』


『素直に頷くなんて、珍しいね。旅行気分で小さな反発心も薄れたのかな?』


『旅行先で余計な言葉禁止!私はもとから素直な性格ですー!』


『君が素直だったことなんて、数えるくらいしか見た記憶がないんだけど。
でも、君は素直に頷くより、元気に言い返す方が似合ってるよ』


『……急な褒め言葉は嬉しいけど戸惑うよ。
っていうか、褒め言葉な気がしないんだけど?』


『ちゃんと褒め言葉のつもりで言ったから、喜んでいいよ』


『素直に喜べないのは、私の性格が悪いのかな?それとも祐樹の言い方なのかな?』


『君の性格じゃないのかな』


『祐樹の言い方のせいで、どんどん嬉しかった気持ちが削がれていくよ。ありがとう』


『どういたしまして』


『皮肉なんだから、素直に受け取らないでくれるかな』


『俺は誰かさんと違って、とても素直な性格の持ち主だから』


『嘘ばっかり言ってる人の言葉じゃないよ!────』

< 77 / 126 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop