君を忘れるその日まで。


「……あ、雨」


修学旅行の1日目が終わり宿泊施設のホテルを散策していれば、大きなガラス張りの窓の向こうから静かに雨音が届いてきた。


「降る雨は同じはずなのに、京都で見るとこんなに綺麗なんだ…」


風呂あがりでまだ濡れている髪をタオルで拭きながら、俺は近くのソファに腰を下ろす。


雨音だけが響く館内は気持ちがよくて、普段の俺ならすぐに眠れてしまいそうだ。


けれど今日は、


「……全然、眠れない」


静けさを増していく景色とは反対に、俺の頭はどんどん冴えてくる。


それはきっと、忘れていた自分の記憶を取り戻し始めているからだろう。

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