君を忘れるその日まで。
「おっ!これ見ろこれ!」
「おぉー!めっちゃいいじゃん!」
「買っちゃえ買っちゃえ!」
修学旅行2日目。
自由行動の時間を与えられた俺は、クラスメートの男子数人と清水寺に続く長い道を歩いていた。
ゆっくりとのぼっていく構造の坂は、両側にびっしりと並ぶ店に対する興奮で、疲れを感じさせないようだ。
「元気だなぁ…」
目の前で輝く笑顔を見せる彼らに、俺は1人苦笑する。
「おし、んじゃこれ買ってくる!」
「あ、俺も買う!」
「じゃあ俺もー」
店に入っていく彼らに「俺はここにいるよ」と返してから、賑わう辺りを見回した。
修学旅行シーズン真っ只中な今。
昔を感じさせる京都の街並みを行き交うのは、制服を身にまとった学生ばかり。
まだあどけなさを残した中学生から、初めての土地を存分に楽しむ高校生まで。
入り乱れる人混みの中でも、目に入る全ての人はみんな同じように笑みをこぼしている。
「………」
その瞳に当てられながら、ふと彼女のことを思い出した。