溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
「そうか。そうだね、気になるね。でも理由は、本当ならもう椿の中にあるんだ。椿が思い出さないから迷うんだ」

「・・・・・・」

「僕のこの行為の意味を、椿が思い出せばなんの問題もない。あ、こんなところではなんだから、こっちへ」

 真壁は椿の腕を掴むと、ランドマークタワーから出て比較的人気の少ない場所に移動した。そこに置かれているベンチに並んで腰を掛ける。

「ひとこと言えばきっと僕も椿も楽になると思う。でも・・それではなんだか僕としては釈然としないんだ。わがままを言ってすまないと思うけど、やっぱり思い出してほしい。僕はすでに椿に会っている。一度だけじゃなく、数度。挨拶もしている」

 そう言われると辛い。どれだけ考えてもまったくなにも出てこないのだから。

 覚えていないことが如実に態度に出て、真壁はがっかりしたように苦笑を浮かべた。自虐的な笑みに見える。椿は申し訳なくていたたまれず、俯いてしまった。

 そんな椿の肩を真壁が抱き寄せる。

「慌てなくていいよ。時間はたっぷりあるから。愛情をたくさんの注ぐ代わりに、僕のわがままを許してほしい」

「・・あい、じょう?」

「椿が好きだ」

「――――――」

「傍にいてほしい。僕以外の誰のものにもならないでほしい」

   ***



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