溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 ひゅっと強めの風が吹いて髪が大きく乱れた。

 驚いて隣に座る真壁の顔を見つめる椿は、思いがけない言葉と熱いまなざしに、世界が止まってしまったかのような錯覚に陥った。

「――――あ」

 好き、という真壁の言葉が椿の中の新たな扉を開く。

(好き――)

 燻っていた、疼いていた、その感情の正体。

 公私を混同してはいけない、自惚れてはいけないと戒めた己の中にある心。

 それらすべてが真壁から与えられたたった一つの言葉が解放された。

 椿は真っ白な中で真壁の精悍な顔を凝視していた。

「椿にとっては面接ではじめて会って、入社日に二度目の対面。以後は会社の上司と部下の関係だろう。いきなり僕が告白しても、きっと信じてもらえないと思う。だからこの気持ちを態度で示そうと思った。同棲を強制――ほとんど強制だったと思うからあえてこう言うが、そうしたのは一人暮らしが心配だったからだ」

「でも、今時、一人暮らしの女性なんていっぱいいるし・・」

「心配って、犯罪だけじゃないよ。他の男が出入りするのを阻止したかった」

 他の男と言われてドキンと心臓が跳ねる。

 そんな相手はまったくいないが、真壁が自分以外の異性の存在を考えているという現実を椿の胸に重く響いた。

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