溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
第4章 揺れる心は好きだから
「ただいま」

 椿は玄関のあたりから聞こえてきた声にはっと息をのんだ。

「椿? いるんじゃないか。寝ちゃったかと思った」

「おかえりなさい・・」

「? どうかした? なにかあったのか?」

 椿の肩がピクンとわずかに跳ねた。こんなに敏感に変化に気づいてくれる真壁が嘘をつくとは思えない。本気で思ってくれている気がする。

(だったら・・マリさんとの結婚は逃れられないから、わたしを囲っておこう、とか?)

 そこまで考え、苦々しく思っている自分にドキンとする。真壁からの告白を受ける前は彼の気持ちが気になり、たとえ本命でなくてもいいとさえ思ったことを思い出したのだ。身の程知らずなことは望むまい、と。それなのに、いつの間にか自分以外の女性の影に不満を抱いているなど。

「椿、本当にどうしたんだ? 話してごらん」

 マリさんが来たの――喉から出かかった言葉を無理やり飲み込む。そしてうっすら微笑んだ。

「疲れただけです。だって事実上、今日から本番だったから」

「なるほど」

「先週は金曜日だけだったから、一日だけで休み!って思えたけど、今日から一週間だと思うと、勤まるかどうか不安でいっぱいで。そう思うと、なんだかとっても疲れちゃって」

「早く休んでしっかり寝ることだね」

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