溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
「どうしてですか?」

「さっきから様子がおかしいから。疲れたという感じでもないように思えてね。会社でなにかあったのか?」

 真壁の優しさに奥底からなにかがこみ上げてくる。

 熱くて、苦しくて、それでいて温かいなにか。

 辛さとうれしが交錯している。椿は自分の気持ちの複雑さを嘆きたくなった。だが、真壁への返事は慎重にしないといけないと思うと、どう答えるべきか思案する。

「なにかあったというか・・」

「うん」

「・・やっぱり、くたびれたって感じ? 構えすぎたのかもしれません」

「家に帰ってきて、ほっとして、ガクッときた感じ?」

「そうそう」

「それはもうしっかり寝るしかないね」

「ですよね。もう寝ます。おやすみなさい」

「うん、おやすみ」

 部屋に戻ろうと立ち上がり、真壁の横を通り越そうとして腕を取られた。顔を向けると真壁も立ち上がる、ぎゅっと抱きしめられた。体全体に真壁の体温が伝わってくる。

「匠さん」

「椿が笑っていないと心配なんだ。すまない」

「やだ、ずいぶん心配性ですね」

「うん。自分でもそう思うよ。だけど、ようやく傍にいてくれるようになったから失いたくないんだ。僕にとっては、椿は単なる職場の部下じゃない。特別な存在だから」

「――――――」

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