溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 激しいなにかがこみ上げてくるのをグッと我慢して押しとどめ、椿は明るい口調で返した。

「ありがとうございます。わたしも匠さんは特別な存在です。だから、仕事で迷惑かけたくないのでしっかり休んで明日に備えますね」

「そうだね。うん」

 手を放してくれたので、椿は微笑みかけるとリビングをあとにした。そして廊下に出ると急いで部屋に向かい、ベッドの中にもぐりこむ。と、同時に、涙が溢れてきた。

(マリさんはどういう存在なの? 周囲が勧めるだけの相手で、匠さん自身には関係ない人? それとも、二股?)

 世の中には同時に複数の人を好きなれる人や、偶然そうなってしまうこともあるだろう。真壁が当てはまらないとは限らない。聞けば済むことだと思いつつも、本人にとってやましいことならば、そうであればあるほど本当のことなど話してくれないと思う。

 手の中でブーンとスマートフォンが震え出した。見るとライトがついて着信相手の名を示している。

(マリさん・・)

 フリックするとメールが展開された。

『つばき、ねた? へんじ、ちょうだいね』

 苦いものが湧いてせり上がってきた。それが罪悪感であることを瞬時に悟る。

 無邪気に誘ってくるマリの麗しい笑顔が浮かんでますます苦みが広がる。

 真壁の婚約者だと思っているマリは椿がその真壁と同棲していることなどこれっぽっちも知らない。もし知ったら、どれだけ怒ることだろう。

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