溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 通信が切れた。スマートフォンをぎゅっと握りしめ、はぁ~と肩を大きく揺らして一際大きなため息をつく。

(楓さんが信頼できるって言うなら、信じても大丈夫かな。でも、匠さん、電話での会話で楓さんを納得させてしまうなんてなにを言ったんだろう……なんかすごく気になる)

 叔母はけっして細かいことを言うほうではなかったが、祖父母や両親がいないから、自由気ままわがまま放題に育ったなんて思われないように気をつけなさいと注意されたものだった。同情されるのはイヤだが、色眼鏡で見られることもイヤだと言って、誰に恥じることのない人間になるべきと言われて育った。同棲自体に反対はしなくても、慎重になれと言いそうなのに、あっさり認め、さらにその相手を認めている様子なのだから、真壁はよほど説得力のあることを言ったのだと思う。

(マリさんの件、どうしよう・・)

 真壁を信頼し、恋人の立場に自信を持てば持つほど、マリへの気持ちや態度は複雑になってくる。いっそ本当のことを言って怒らせてしまい、関わりたくないと思ってもらったほうがいいのかも、とも思ってみる。

(・・そんなの、こわくて言えない)

 であれば、もう隠し続けるしかない。ここはコンシェルジュのいる高級ハイタワーマンションだから、マリが勝手に入ってここまで来ることはできない。椿がいる以上、真壁もおそらく許さないだろう。

「メールの返事、どうしよう・・」

 真壁との特別な関係を隠すことは可能だろうが、秘書であることは知られている。失礼なことをすれば真壁の耳に入るだろう。その入り方が、秘書としてなっていない、となれば大変だ。

 断る、という選択はないと思った。だが、もしホイホイ出向いていき、バレたら・・バカにしていると言われるかもしれない

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