溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 案の定、椿の同意に真壁はうれしそうに明るく笑った。

「じゃあ、用意しよう」

 食器を食洗器に入れる。洗剤を投入したらあとはスイッチを入れるだけ。椿は急いで部屋に行き、着替えて用意をする。

(これって、やっぱりデートよね?)

 私物を買いにショッピングセンターに行くのだから仕事ではないはずだ。しかも目的の大部分が椿の必需品と思われるもので、二人が不自由なく暮らすための買い物。なんだかまるで新婚の夫婦みたいで、考えるほどに浮き足立ってしまう。

 真壁のために食事を作り、真壁のために部屋を掃除し、真壁の衣類を洗濯する。そんな生活が始まるなど思いもしなかった。

(匠さんがわたしのことどう思っているかわからないけど、少なくても雇われているだけの仕事はしないと)

 告白されたわけではないのでうがったことを考えることはできない。椿は行き過ぎないように気持ちを整え、用意を終わらせて真壁ももとに戻った

「お待たせしました。あの、昨日買ってもらった服を着てみたんですが、どうです?」

「似合ってるよ。とても」

「よかった。お店での試着って二割増しくらいに見えるもんだから」

「そんなことないと思うけど。でも・・」

「はい?」

「はい?」

「あんまり可愛くなられると心配だな」

「?」

 小首を傾げる椿に真壁がふっと微笑む。

「不要な虫がいっぱい寄ってきそうで気が気でない。でも、だからってダサいかっこうをさせるのは僕の趣味じゃない。まったくもってジレンマだ」

 それはどういう意味? と聞き返したくなるのを押しとどめ、椿は曖昧に微笑み返した。

(時々匠さんの言ってることがわからなくなるんだけど・・)
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