溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 だが、じっと見つめられたらそんな言葉は言えなくなってしまう。

「椿……」

「はい」

「キスしていい?」

「え?」

「イヤだよね。ごめん。聞かなかったことにしてほしい」

 困ったように身を返した真壁の腕を、椿は意図せず弾かれたように掴んでしまった。

「ん?」

「イヤじゃないです」

「え――」

「あ、すみませんっ。でも、匠さんに触れられるの、イヤじゃないですから」

 沈黙。だがすぐに頭上から真壁の吐息が落ちてきた。

「そう言ってもらえてうれしいよ。お許しが出たから、ちょっとだけ」

 頬に温かい手が添えられたかと思った瞬間、頬に柔らかな感触は広がった。

「朝っぱらから不謹慎だよね」

「でも……外国ではキスって挨拶でしょ? 山瀬さんから、匠さんは留学の経験があって外国人の習慣がついているからって言ってました。だったら拒否するほうがおかしいですから。大丈夫です」

「そっか。そうだね。」

 笑う真壁に椿はもう一つ言いたかった言葉を飲み込んだ。ここで、外国の挨拶なんかじゃじゃない、と言ってくれたら聞けたはず。

 わたしのことどう思っていらっしゃるのですか?――と。

   ***
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