溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
「いってらっしゃいませ」

 受付フロントのコンシェルジュに見送られ、エントランスを出ると、すでに真壁の愛車が止まっていて、横に男性コンシェルジュが立っている。出頭に連絡を入れていたからだが、なにもかもが他人の手によって整えられていて、椿はただただ驚くばかりだ。

 こういうことを見てしまうと、住んでいる世界が違いすぎて怖じ気づいてしまう。身の程知らずだと言われている気がして仕方がない。

(わたしは雇われているの。だから怖じ気づいて逃げ出しちゃいけないの)

 と、自らを叱責する。

 自惚れなければいいだけ。仕事だとちゃんと理解していれば問題ない。

(わたしは匠さんのプライベートセクレタリーでもあるんだもの)

 助手席に乗り込み、シートベルトをすると、真壁がアクセルを踏んだ。

「どこへ行くんです?」

「横浜のつもり。他に候補ある?」

「いいえ、お任せします。わたし、免許証持っていないので交代できないし」

「そうなんだ。持っているほうが便利だよ? 身分証明書にもなるし」

「それはよくわかっているのですけど、必要に迫られなかったのと、性格的に合わない気がして・・」

 すると真壁は軽快な笑い声を上げた。

「いい判断かもしれないね」

 暗にどんくさいと言われた気がしてさすがにしょぼんとなる。

「事故してからでは遅いから。僕が椿の運転手になるから心配することないよ。ずっとね」

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