溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 よほど気に入ったようだ。真壁はしばらく呆気に取れたような感じでじっと椿がアップルパイを食べるのを眺めていたが、やがて頬杖をついて微笑ましいと言いたげな表情になった。

「テイクアウトができるようだから買って帰ろう」

「あ、それいいですね。どれを選ぶか悔いのないようにしないと」

「二、三個買えばいいじゃないか。冷凍すればすぐに食べなくてもいいだろうから」

「!」

「ん?」

「匠さん、天才!」

「そう? お褒めに与って光栄だよ」

 言いつつクスクス笑っているの真壁に、椿は自分がなにか変なことを言ったのかと小首を傾げた。

 結局、三種類をセレクトしたが、まだこれからいろいろと散策し、ショッピングもするので荷物になるから帰りにもう一度寄ることになった。

 再び手をつないで歩く。真壁が握る力加減が椿には強く思えて緊張してしまう。比べる対象がないのでこれが強いのか弱いのかよくわからないのだが、なんだか「逃がさないぞ」と言われているような気がするのだ。

(いやだ、わたし・・やっぱり自惚れてる)

 トクトクと心臓は踊りっぱなしだ。

 チラリと目だけ動かして真壁の横顔、その表情を確認するが、いつも通りの穏やかで優しげもので今なにを考えているのかさっぱりわからない。

(あっ)

 気後れから手を動かすと、ぎゅっと強く握りしめられた。

(匠さん・・)

 心音がますます大きくなっていく。それと同時に体中が熱く感じて仕方がない。

(匠さんに酔いそう・・)

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