コガレル(番外編)~弥生ホリック~
side弥生



“ごめん、迎えに行けそうにない"


 羽田空港に到着した時、圭さんにラインをした、その返事。

 それで構わない。
 今日は仕事って分かってたんだし、仕方がない。
 仕事が終われば、夜には会えるんだから。

 到着ロビーのガラス張りの向こうを眺めた。
 夕焼けは遮りのない辺り一帯を、点在する航空機ごと茜色に染めた。

 圭さんにはお正月に会ったから、あれから二ヶ月と少し。
 あの時着込んでた冬のコートはすっかり出番がなくなった。
 替りに春のコートを羽織った今は、寒さが少し心配。
 この時期の東京の気温をすっかり忘れてしまった。
 熊本と変わらなければいいんだけど。

 時間をそう空けずにトークの続きが届いた。

“鍵渡すから、取りに来られる?"

 圭さんは春から始まるドラマのために、都内の収録スタジオにいるらしい。
 予め圭さんの仕事が終わらなかった場合を想定してたから、その時私はマンションで待つように言われてた。
 だからその鍵を渡すって意味だ。


 もう少しで圭さんに会える、そんな今日は…私の誕生日だった。

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