コガレル(番外編)~弥生ホリック~
side K
「OKです! 本日分終了です!」
「お疲れ様でした!」
今日の収録分を撮り終えて、労いの言葉がスタジオに飛び交った。
楽屋に戻るとスマホを出して、今から帰るってラインに送った。
予想を大幅に越えて収録は押してしまった。
待ち合わせを外にしなくて良かった。
危うく弥生に待ちぼうけを喰らわせるところだった。
着替え終えて確認しても、ラインはまだ既読にならない。
俺の部屋で何を思って待ってんだろう、ふとそんなことを考えて顔がニヤけそうになった時、ドアがノックされた。
「はい」
返事を聞いてから、入ってきたのは澤口。
年が明けてから涌井に替わって、新しく俺の担当になったマネージャーだ。
澤口はスタジオの隅でスタッフさんと打ち合わせしてから、遅れて楽屋へ戻ってきた。
月曜の入り時間を知らされたから、「了解」と返事をした。
これで今日の仕事は全て終了、明日は久々のオフだ。
「お疲れ」
澤口に一声かけて帰ろうとした時、呼び止められた。
「この後ご飯とか、どう?」
は?どうって?
今日は大事な用があると、ドラマチームの食事会を断った。
しかもさっき収録の途中澤口には、弥生に鍵も渡してもらった。
俺が食事になんて行けないのは、簡単に想像がつくだろうに。
「悪いけど、彼女が待ってるから」
「待ってないかもよ?」
廊下へ出ようと開いたドアを、その言葉で一旦戻した。