コガレル(番外編)~弥生ホリック~
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2月。
なんの前触れもなく圭さんから、東京ー熊本の往復航空券が届いた。
「今、大丈夫ですか?」
チケットの入った書留を受け取るとすぐに、圭さんに電話をかけた。
「もしかして届いた?」
「はい、受け取りました。私の誕生日ですね?」
「俺はそっちに行けそうにないから、弥生が来て」
圭さんと知り合ってから初めての誕生日。
サプライズが得意な圭さんだから、もしかしたら本当は熊本に来ようと画策したのかも知れない。
「行きます。圭さん、ありがとうございます」
土曜日だから、私の仕事は休み。
圭さんに会える。
「弥生…」
「はい」
いつもと変わらずに、私の名前を呼ぶ声が耳に優しい。
ラインも楽しいけど、やっぱり声の方が温かみを感じる。
それなのに電話の向こうでなぜか歯切れの悪い圭さん。
「…ごめん、もう行かなきゃ。切るわ」
「お仕事、頑張って下さい」
「ハイハイ。じゃあね」
電話は圭さんによって切られた。
圭さんが何か言いかけたのは、もしかしたら…あのことかも知れない。